少し寒いが、そんなに時間がかからない距離にあるみたいだし、まあ問題ないだろう。
と思っていたわけだけど、なぜかバイクの音がもう一度聞こえてきたのは一時間ちかく経ってからだった。
さすがに暖かくなり始めの季節とはいっても、辛かった。
「お待たせ」
「待ちました」
しかし、送ってくれると思ったら、エンジンを切った。
「……送ってくれないんですか?」
「話、しようかと思ってな」
「寒いです」
「薬剤師は一人で家に上げない主義なんだよ、悪いな」
「もういいです。で、話って何ですか?」
そう言うと、由希さんはバイクに軽く腰をかけて言う。
「実際のところ、片峰は薬剤師のことどう思ってるんだ?」
「……どうって、言われても」
「腹割って話せよ」
適当に、冗談とかあやふやなことを言って逃れられるような雰囲気ではないと、俺でもわかった。
この人は本気で聞いている。本気で、和加奈のことを思って聞いている。だから、俺も本気で答えないといけないと思っている。
でも、一つ疑問があった。
「答える前に、一つだけ聞いてもいいですか」
「いや、駄目だ」
「いや、そこをなんとか」
「わかった。なんだ」
ものわかりよすぎでしょう。まあ、それで悪いことは何もない。
「由希さんって、薬剤師とどういう関係なんですか?」
「ああ。まあ、あれだな。元、片峰と同じ立場の人間だな」
「っていうのは、つまり、同居人……ってことですか?」
「ああ。そうだ。一番最初……ってところだ」
じじいも言っていた。俺の前に何人も、俺と同じような目的で一緒に暮らしていた人がいると。
しかし、じじいはこうも言っていた。愛澤のわがままに耐えられなくなって出ていくと。
でも、今日のあの感じを見たところ、お互いに別に悪い感情を持っている感じはしなかった。
「まあ、理由はあれだな。薬剤師との関係のせいだな」
「恋人ですか?」
「ああ。薬剤師と一緒に住んでたら、相手を呼ぶことなんてできないだろ?呼ぶ時は出て行ってくれるとか言ってたけど、そんな気を使わせるのも悪いしさ。
会うときは、相手の家に言ってたんだ。そしてら、相手がなんで私の家に入れてくれないのだとか言い始めて、結構関係がやばいことになってたんだ」
まあ、確かに呼べるわけがな。それが原因になって、意見の不一致が起き、仲が悪くなり出ていくことになったのか。
いや、そうすると、今の関係がどうも納得できない。
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